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目次

■【初めて発表会に参加されるご家族の皆さまへ】

─2025年度 個人実技レッスン発表会に際して─ アノネ音楽教室代表 笹森壮大より

保護者の皆さまへ

この度は、お子さまのご発表、誠におめでとうございます。 本日の発表会に向けて、子どもたちは何か月も前からコツコツと練習を積み重ねてきました。その道のりは決して順風満帆ではなく、一進一退を繰り返しながら歩んできたことと思います。 私たち指導者は、たった一人でステージに立つ子どもたちを、保護者の皆さまと同じように、期待と緊張が入り交じる思いで見守っています。アノネ音楽教室の代表として、すべての子どもたちがこの発表会という年に一度の大舞台で「成長の糧」を得られることを、心から願っております。

小さなミスよりも大きな努力を これまでの発表会で印象に残っている出来事があります。 2年生のAくん(ピアノ科)は、毎日2時間もの練習を重ねて本番に臨みました。当日の演奏は一音一音が丁寧で、心に響く素晴らしいものでした。 しかし後日、「たくさん練習したのにミスしてしまった。失敗だった」とAくんは言いました。私が「本当に素晴らしかったよ」と伝えても、それは慰めにしか聞こえなかったようでした。 発表会は、点数や順位を競う場ではありません。 緊張から指がもつれたり、繰り返しを忘れたりすることは誰にでもあります。それでも、一瞬のミスのために数か月の努力がかすむことはありません。積み重ねてきた努力に比べれば、ほんの一瞬のミスなど取るに足らない出来事です。

「振り返りたくない経験」にしないために 年齢が上がるにつれ、子どもたちはミスを重く受け止めるようになります。周囲が感動していても、本人にとっては「振り返りたくない思い出」になってしまうこともあります。 私はAくんの演奏を聴き、「こんなに真摯に音楽と向き合ってくれてありがとう」と強く感じました。丁寧な演奏からは、音楽に対する真摯な姿勢と学ぶ力(学習観)が育っていることが伝わってきました。たった2年で、聴く人の心を動かす演奏ができるようになっていたのです。 しかし彼自身は、その素晴らしさに目を向けられず、小さなミスばかりを気にしていました。これは私たち指導者が「発表会は結果だけではなく過程を大切にする場である」と十分に伝えきれていなかったからだと反省をしました。それ以来、私たちは毎年、発表会の半年前から講師全員で勉強会を重ね、子どもたちが技術面・精神面ともにベストな状態で本番に臨めるよう努めています。

経験を「次への力」に 私たちは、発表会が誰一人にとっても「振り返りたくない経験」とならないことを願っています。 たとえ思うようにいかなかったとしても、悔しさや落胆を糧にして「次はもっとがんばろう」と思えるようにサポートすることが、私たちの役目だと考えています。 もしお子さまがミスにとらわれている様子がありましたら、「よくがんばったね」「次はきっともっと素敵になるね」といった前向きな言葉で、次の一歩を踏み出せるようお力添えいただければ幸いです。

おわりに もちろん、そういった事柄の有無にかかわらず、発表会は多くの人にとって心あたたまる素晴らしい機会だと思います。私たちも、子どもたちの晴れ舞台を見ることができ、一生懸命な演奏に感謝を伝えられるこの機会を大切にしてまいります。携わる全ての方にとって、素敵な時間となりますように。

■2025年度 発表会伴奏者

阿部明日見 齋藤紫憂 柴垣莉子 只木瑠梨 橋本堅登 森嶋奏帆 横田理央